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執筆者の写真田中 利幸

「わかる」ということ


 よく、合気道の型はわかりにくといわれます。

 では、そのわかりにくいものをわかりやすくするにはどうすればよいのでしょう。

 「分かる」、「解かる」、「判る」、どれも1つのものを別々に切り離すという意味があります。

わかりやすくするためには、わかりにくい大きなかたまりを細かく分解して、1つ1つの部品が単純で理解しやすく行いやすいところまで分解するのが良いと思います。そして、1つ1つの部品を丁寧に稽古して磨きをかけてから、改めて組み合わせていくのです。

 昔、まだ録音技術が確立されていなかった時代、あるラジオ番組に定期的に出演していたセロ弾きの話です。

彼はやり直しのできない演奏を行うために、自分が演奏する楽譜の1つ1つの音符に対して、なぜその音なのか、その音はどういう意味があるのかというところまで自らの解釈を構築していたそうです。彼の魂のこもった1つ1つの音が組み合わさったとき、その音楽は単なる曲ではなく、彼そのものになっていたのかも知れません。

 合気道も同様に、単なる型に自らの魂を込め、ただ型をなぞるのではなく、自らを表現し得る型に昇華させることができるはずです。

 もちろん、はじめは指導者の解釈で分解された部品を習うことになるでしょうが、ある程度稽古が進むと、今度は自らの解釈で型を分解し、1つ1つの部品にし、それぞれの部品を磨き、そして改めて組み上げるということができるようになります。そうすると、その人らしさが型に現れてきます。そうなってくると、「おぼえた」という状態から「わかる(わけることができる)」という状態へ進展したといえるのかもしれません。

 1つの型に対し、試行錯誤しながら、何度も何度も分解と構築を繰り返し、自分なりの解釈を組み上げていく取り組みが稽古の醍醐味の1つです。

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