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執筆者の写真田中 利幸

稽古の発想 ~その3『束縛への気付き』~

無限の自由度・選択肢の中で私達がどのように振る舞うのかを具体的に考えると、それはとても難しそうです。


そこで、範囲を限定して、その範囲の中での最大の自由度・選択肢を考えて、稽古をすすめるのがよいと私は考えます。


限られた範囲であれば、選択肢の数も限られ、その中から最善を選ぶことも可能です。


たとえば、画家が絵を描く際に、有限の大きさの平面(キャンパス)に絵具で絵を書きます。


この様に、有限の平面という束縛があるからこそ、その範囲での最高の絵を描き得るのです。


もしもキャンパスの大きさが無限であれば、どんなに絵具を塗りたくっても絵は永遠に完成しそうにありません。


私達も、道場という限られた空間で、道着を着て、合気道らしい動きに限定することで稽古ができています。


しかし、芸の本質に辿り着くためには、それらの束縛を少しづつ解いていくことが大切だと私は考えます。


画家であれば、キャンパスを飛び出して、絵具からも離れるということです。キャンパスと絵具という束縛から解放されるのです。


私達人間にとって、最終的に残る束縛は肉体と寿命と環境のみです。言い換えると空間と時間と場の束縛です。


ここでの環境とは、重力や空気などの自然や、自身の呼吸や体温等の生理現象のことを指しています。


私達が様々な束縛の存在に気づき、それらの束縛を適度に解いたり時には与えたりすることで、より良い稽古を進めてゆけるのだと私は考えます。


では、可能な限り束縛を解き去ったとても自由な状態で、私達はいかに振る舞うのがよいのでしょう?

(つづく)

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