歩く様に ~受動的筋力~
- 田中 利幸

- 1 時間前
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去る2025年10月13日に東京中央区浜町の中央区スポーツセンターで「遠藤征四郎師範&気結びっフレンドシップセミナー」という長い名前のセミナーの講師を務めさせていただきました。
私のクラスでは「前足で歩く様に」というテーマで稽古を進めました。
その中で、お伝えできなかったことをここで補足として述べさせていただきます。
私達が両足で歩く時、右左右左と足を交互に動かして歩きます。
この時、私達の足はどうして前へ運ばれるのでしょうか?
ちょっとそこで両足を揃えて立ってから、前方へ歩き始めてみてください。ゆっくりと。
如何でしょう?
次の様になっていたのではないでしょうか?
①まず両足の膝がわずかに緩んだ後に、片足の踵が上がり、体重が反対の足へ移ります。
②上げた足の膝が自然と前へ出たことでわずかに重心が前へ移動し、前方へ身体が倒れ始めます。
(後ろ歩きの場合は、踵を後ろへ持ち上げることで重心が後ろへ移動しているはずです)
③すると、その身体を受け止める様に上げた足の膝から下が振り子の様に前へぶら下がりながら揺れだして接地します。

では、この接地した足の裏は、私達が意識で操作して地面を押しているのでしょうか?
違いますよね?
私達の両足は、私達が意識しなくても、地面へ落下しようとする身体を自動的且つ的確に受け止めて支えているのです。
このような受け止めたり支えたりする様な、動きの殆ど無い筋力の使い方を『受動的筋力』と言ったりします。
鉄棒に指先を引っ掛けてぶら下がる時の握力は受動的筋力であり、握力計を握る時(動きがある時)の筋力は能動的筋力(になりやすい)です。
一般に、受動的筋力では能動的筋力よりも強い力が発揮されます。
また、受動的筋力は、その時必要な量だけを発揮します。余計な力を出し過ぎたりはしません。受け止めるだけなので。
そして、ここが重要なのですが、受動的筋力の方向もまた受動的に決まります。風見鶏が風の方向を指す様に。
力の量と方向は私達が意識せずとも受動的に決まるのです。
では、私達の前足=腕を如何に使うのか?
私達が腕を使う場合、何か作業の目的があって、能動的な使い方をすることが多いと思います。
では日常生活の中で、腕を受動的に使っている場面が無いかというとそうでもありません。
壁や机に手をついて寄りかかっている時、寝床から立ち上がる時、重い荷物を抱えて歩く時など、何かを「支える」時には、私達の腕も受動的に働いているのです。
そして、私達が四つ足歩きをする時も、私達の腕は受動的に働いているはずです。
四つ足歩きの先生として、チーター先生の特に前足の歩きを観察してみました。
(Webで検索すると沢山動画がヒットしますので是非ごらんください)
すると、特に手首の力が抜けていて、手首を振り子の様にブラブラにしながら歩いている様に見えます。
後ろ足は、おそらく膝から下が振り子状態なのではないでしょうか。
(ただし、必要に応じて全身を振り子状態にできる方が良いでしょう。高い所に登ったり、飛び降りたりする時など。体操選手のように。)

では、振り子のようなブラブラな手で相手の上に接地するとしても、その相手が地面の様に盤石であるとは限りません。
海辺の岩場の上を歩く時、私達はどのように歩くでしょう?
海辺の岩場にはときどきグラグラ動いたり、表面がツルツル滑る岩がありとても歩き辛いです。
あの時の足の使い方を思い出してください。そっと指先で岩に触れてゆっくりと体重を移していく、あの感覚です。
暗闇で歩く時の感覚も近いものがあると思います。また掌で棒を立てる遊びとも近い感覚です。


左が固い例(✕)で右が柔らかく紐の様になっている振り子の例(〇)です。接地する動きは図の上から下へ、離すときはその逆です。
この要領で相手という大地の上へ前足を踏み出すのです。

四つ足歩きの様に

私達が意識して狙わずとも、前足が相手に触れて接地するわずかな間に相手の中心へむかってまっすぐに受動的に立つことができるのです。
そして、相手と共に立つ時、私達は2つではなく1つになっており、無敵なのです。




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