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執筆者の写真田中 利幸

即興性・芸術性

 大阪万博の「太陽の塔」の作者、岡本太郎さんの言葉が好きです。

 たとえば、次の言葉です。


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『でたらめをやってごらん。

口先では簡単にでたらめなら、と言うけれども、いざでたらめをやろうとすると、それができない。

気まぐれでも、何でもかまわない。

ふと惹かれるものがあったら、計画性を考えないで、パッと、何でもいいから、そのときやりたいことに手を出してみるといい。

不思議なもので、自分が求めているときには、それにこたえてくれるものが自然にわかるものだ。』

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『同じことを繰り返すくらいなら、死んでしまえ。』

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『手なれたものには飛躍がない。常に猛烈なシロウトとして、危険をおかし、直感に賭けてこそ、ひらめきが生まれるのだ。』

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『まっさらな目をもて!そして目的を捨てろ!』

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『素朴に、無邪気に、幼児のような眼をみはらなければ、世界はふくらまない。

他人のものはもちろん、たとえ自分の仕事でも、なぞってはならない。』



 私達は、合気道の稽古で、『型』を中心に稽古を進めて行きます。

 また、『型』の存在が流派の違いを明確にします。

 私達は、『型』に対して、間違えたり、正しかったりという判断をすることもあります。


 『型』は楽譜に似ています。

 異なる演奏者が同じ楽譜を見て演奏しても、同じ音にはなりません。異なる音を出します。個性があります。

 演奏者はそこに芸術性を発揮しているのであり、楽譜を上手になぞることを見せびらかしているのではありません。

 ある音楽教師が生徒に「あなたの演奏には楽譜が見える」と指摘したそうです。楽譜をなぞっていることが分かる演奏ではだめだということでしょう。


 かつて、弓聖阿波研造師範は弟子のヘリゲル氏に次のように言いました。


『暗記したように「儀式(=型)」をすらすらと行なうのでなく、あたかもその瞬間のインスピレーションで創造するかのようになると、舞手と舞手が一体となるのです。

神楽舞のように弓道を行うと、覚醒した精神は最高の力を発揮するようになるのです。』

(無我と無私 Zen in the Art of Archery by Eugen Herrugel (オイゲン・ヘリゲル著 藤原美子訳)より)


 即興性です。

 子供は模倣の天才であると同時に即興の天才です。

 しかし私達は、大人になるにつれて、適度な模倣(協調性)を覚え、即興性は失っている様に思います。

 特に日本の社会の中では、即興性(個性)は恥ずかしいものとして感じてしまう為かも知れません。


 私達は、合気道の稽古を通して、忘れかけていた芸術性・即興性を呼び覚まそうとしていると言っても良いかもしれません。

 芸術性と即興性と2つに分けて書いていますが、実は同じものであると私は考えています。即興性です。

 

 即興性とはどういうことでしょう。ランダムに行うことでも、奇抜なことを行うことでもありません。

 ランダムに行おうという意図があったり、奇抜に行う意図があれば、それは既に即興ではなく計画です。


 不意に頭を掻く、振り返る、背伸びをする等、実は私達は生活の中で即興性を発揮しています。

 しかしこれだけでは何かが足りません。


 それは『美しい気分』とでも呼ぶべきものです。

 これは、姿勢・呼吸・脱力が整い、静かに待つことでしか現れない状態だと思います。

 その精神と身体の状態で以て、不意の即興を、内なる自分にやらせるのです。

 自分はただそれを邪魔しないように静かに見ているような状態です。

 これを既存の言葉で表現すれば『禅』ということになります。


 そんなことに一体何の価値があるのですか?とお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。

 その様に問われても、私は『価値』という表現でこのことに意味をつける術を知りません。

 ただ、私にとってはこの上なく素晴らしいものだと感じていること、その素晴らしさを他の人にも知ってほしいと思っているとしか言えません。 


  最後にもうひとつ、  


 『年とともに若くなっていくのが自分でわかるね。』岡本太郎 


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