『強烈な努力』
これは、囲碁の棋聖、藤沢秀行氏の絶筆です。
死の間際、病院のベッドの上で、声も出ない状況で、点滴が繋がれた腕で突然に書かれたそうです。この書が発する気迫からは想像もつきません。
この言葉を題名に持つ彼の詩もあります。
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碁は芸である
碁には個性、生き方、
その人間のすべてがあらわれる
無限に続く芸の道は厳しいが
ひたむきに歩む物は幸せだ
人間を高め、力をつけよ
自分にしか打てない碁を探求せよ
これだけは伝えたい
強烈な努力が必要だ
ただの努力じゃダメだ
強烈な、強烈な努力だ
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藤沢秀行・・・本名「保」から改名し「ひでゆき」としたが、周囲の皆は「しゅうこう」と親しみを込めて呼んだそうです。
大酒を呑み、大博打を打ち、正妻の他に4人の愛人にそれぞれ3人の子(合計15人)が居たといいます。
泥酔状態でも、並のプロ棋士では歯が立たないその強さは、「怪物」「化け物」との異名を持ち、数々の逸話を残しています。
そんな藤沢秀行氏が若手棋士を育てる為に行った秀行塾の指導では、無難な定石を打ったり、勝負から逃げる姿勢を強く叱ったそうです。
逆に、その人なりの創意工夫によって打たれた手は、それがどんなに悪い手であっても、叱らずに褒めていたそうです。
型破りな創造性を歓迎する指導方法です。
ここで定石というのは、武道でいう型のようなものです。
藤沢氏は、その著書「勝負と芸」の中で、この定石について、
「ある人が、有名な定石の本を暗記したが、少しも強くも良くもならなかった、定石というのは、まるで絵画を眺めるように、その美しさを眺める様に見るのが良い。」
といった趣旨のことを述べています。
また、名局については、
「名局と呼べるのは、互いに最善手を打ち続けた結果にできるもので、目先の勝負や、卑怯な手を使ったものは名局にはなり得ない、名局は対戦者2人で作り上げていくものだ。」
といった趣旨のことを述べています。
目先の勝負に勝とうとするのではなく芸を磨くことを大切にした勝負師の哲学。
碁を打つのは、人の心、つまりは人間性が大切であると考え、諸芸に触れて学んだ人。
そんな彼の信念は、
『碁とは,勝負である前に創造であり芸術である』
でした。
さて、私達の行っている合気道は如何でしょうか。
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