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執筆者の写真田中 利幸

蜘蛛の巣

型、技、段位、流儀、流派、

手順、効果、階級、派閥、名称、

ルール、反則、順位、しきたり、様式、


これらは本当は滑稽なものである、と言うと誤解を招いてしまうでしょうか。


人間は、何かの小さな枠の中である方が、目的を持ち行動しやすくなるものだろうと思います。

その枠の中での小さな自由であれば見つけ易いということです。


しかし、その枠の中での自由に限界を感じたり、飽きてしまったら、その枠を破るしかありません。

最終的には、すべての枠を破り切るということがあり得るのかどうか?ということが気になります。


今の私が考えうる最後の枠は、身体と寿命の2つです。

これは空間と時間の限界と言い換えられると考えています。


私は、身体と寿命までも破りたいとは考えていません。

私が望むのは、身体と寿命という枠の中での最大限の自由です。


合気道の稽古では、様々な型、技、流儀、流派があり、暗黙の了解、忖度する態度、思い込みなど、様々な枠があると思います。

これらの枠は、私達が、日常の社会生活を比較的平穏に安全に過ごす為に役立っているのかもしれませんが、最終的には不要なものです。

私自身もそうですが、皆様の稽古を拝見していると、このしがらみからなかなか自らを開放できないことで悪戦苦闘しているように感じます。


いつからか、我が家の庭の一角に蜘蛛が巣を張っています。

黄色と黒の縞々の身体、巣にはギザギザの文様。

カミナリ蜘蛛です。


蜘蛛が巣を張るのは、蜘蛛が巣の張り方を誰かから習ったわけでも、指示されたわけでもありません。

なぜか、蜘蛛は巧みに巣を張ることができるのです。

その理由は当の蜘蛛自身も知らないことでしょう。


蜘蛛が巣を張るのに、目的や理由があるでしょうか。

少なくとも蜘蛛自身は、目的意識や理由など感じず、ただ巣を張っている、気が付けば巣を張っていたという具合ではないでしょうか。

蜘蛛は意図せず巣を張り、意図せず虫が掛かり、意図せず虫を食べているのだと思います。


蜘蛛や虫たちは、誰に指図されたり支配されることもなく、その身体と寿命を最大限に活かして生きて死んでいくのだと思います。

それに比べて人間のなんと不自由なことでしょう。


確か、小学生のころ、


「みなさんは生まれながらに日本人ですので、日本人として日本の決まりを守らなければならない」


と社会科の授業で先生から言われたときに、強烈な違和感を感じたのを今でも覚えています。

どこのだれだか知らない人が勝手に決めたルールに従わないと罰せられるということに納得がいかなかったのです。

君は支配されているのです、という事実に衝撃を受けました。


そんな私も今は周囲から見れば『おとな』と呼ばれざるを得ない年齢となりました。

歳を重ねるにつれて、本当の自由な心を得たいものです。



~私の中にわずかに残る少年の私から世の少年諸君へ!~


138億年の宇宙の歴史の中の一瞬である現在、

2兆個ある銀河の1つ、天の川銀河にある2000億個の星の1つであるこの地球で、

いま僕たちはそれぞれの境遇に生まれて生きています。


その境遇は僕たちにとっては世界の全ての様に感じますが、宇宙から見るとチリほどのものでもありません。

身の回りの社会のしがらみが窮屈だと感じたなら、自然に触れ、自然を感じ、自然を考えてみてはどうでしょう。


晴れた夜、星空を見るとき、僕たちが見ているのは、宇宙です。その無限で途方も無い奥行きは、天体を半球体の面の様に錯覚させます。

しかし本当は閉じた面ではなく、無限の奥行きがあり、確かにそれを見ているはずなのです。


半球体の面を見ていると思うのか、無限の彼方を見ていると思うのかは、同じ夜空を見ていても大きく意味が異なります。


なにかを見るとき、これまで見たことがあるものであっても、宇宙の彼方を見つめる目で見てみましょう。

きっと新しい発見があるはずです。

そして、抗いようのないほど大きな自然という蠢(うごめ)きの中に、泡粒の様に発生した自分を見出し、自分を支配し得るのは何か、どうであれば自分は納得できるのかを見出していくのかもしれません。



今日も我が家の蜘蛛は、その直径50cm程の巣の中心に居て、あたかもそこが世界の中心かの様に堂々と生きています。

蜘蛛は生まれながらに身の程を知り、身に余る巣を張ることなく、適切な大きさの巣の上で宇宙の果てを見つめているのかもしれません。


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