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執筆者の写真田中 利幸

一隅を照らす


5月4日に、我が師である遠藤征四郎先生の佐久道場25周年記念祝賀会が長野県佐久市のホテルで開催されました。 祝賀会には植芝充央本部道場道場長をはじめ、国内外の指導者等400名あまりの方が集いました。 毎年ゴールデンウィークには佐久道場で5日間の国際研修会が開催されていますが、今回も研修会の4日目に祝賀会を盛り込む形をとられました。 私も祝賀会に馳せ参じたかったのですが、地元のイベントを5日に控えていた為に参加を断念し、せめて妻だけでもとの思いで、妻に長野へ参じてもらいました。 妻が持ち帰った祝賀会の挨拶の手紙を開くと、「一隅を照らす」という言葉が目にとまりました。私にとって子供の頃から馴染みのある言葉です。なぜなら、私の実家の側にあるお寺の門前の石塔にこのことばが刻まれているのを学校の行き帰りに見ていたからです。 この言葉は天台宗を開いた最澄の言葉で、「一隅(いちぐう)」とは今自分が置かれている場所や立場のことで、 そこで精一杯与えられた使命に打ち込んで輝くことで周囲をも照らすという様な意味がこの言葉にはあります。 遠藤先生は「一隅を照らす」という志を持たれて佐久道場を建てられたのです。 種が落ちたところで精一杯芽を出す様に、佐久の地に落とされた一粒の種は、今や大きく成長し世界中の合気道家を照らしています。 実はこの度、私の心中には、今回の祝賀会だけはかなりの無理をしてでも出席するべきだったのではという迷いが最後までありました。 しかし、この「一隅を照らす」という言葉に救われました。 私は私なりに私の置かれているこの岡山の地で、共に合気道を修業する仲間たちと5日に行われるイベントを全うすることが使命であり、遠藤先生から頂いた合気道の種を岡山の地で芽生えさせ育てることが、先生への恩返しになると、この言葉を見て思える様になったのです。  5月5日のイベントは、玉島武道館で行われた武道祭で、合気道の他に剣道、柔道、空手道、少林寺拳法、居合道の各団体が演武や体験会を半日に渡って開催するものでした。  当会の演武では子ども達を中心に日頃の稽古方法等を紹介する内容を行い、子ども達は緊張しながらもいきいきとした素晴らしい演武を観せてくれました。  また、タイムキーパー兼号令役を直前にお願いしたHさんには私のミスを機転よくカバーして頂いたり、Tさんには去年私が押し忘れたビデオカメラの録画ボタンを押して頂いたり、60代後半でも子どもの受けをとって下さったOさんAさん、その他多くの皆様のサポートを頂き、体験会も盛り上がって無事に終えることができました。  午後は近くの丸山公園でバーベキューを行い30名以上の仲間で賑やかに楽しい時間を過ごせました。  この公園は小山をそのまま公園にしたもので、長い滑り台がウリの1つですが、実は私が学生時代のアルバイトでこの公園の建設に携わった懐かしい場所でもあります。  真夏の1ヶ月間、この小山を上り下りしながら石や鉄骨を運んだり、土を掘ったり、コンクリートまみれになった過酷な思い出の場所です。  同じその公園で、共に合気道を修業する子どもたちと小山を何周も上り下りしたり、滑り台を滑ったりして、ヘトヘトになりました。日頃道場では見られない子ども達の可愛い素顔をみることができて、とても素敵な時間でした。  まさか20数年後に合気道の子どもたちとその小山を駆け巡ることになるとは、あの真夏の工事現場に立っていた若き日の私には想像もつかなかったことで、本当にありがたいことだと思いました。  そういえば、佐久道場の祝賀会の記念品のTシャツには、様々な言語で「ありがとう」と書かれていました。







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